
バシル・ボシコフ・コレクションについて
バシル・ボシコフ・コレクションは、2005年以降収集された考古学資料によって構成されています。それらは様々な素材で作られ、また新石器時代から後期古代まで遡る様々なタイプの美術工芸品を含みます。
美術工芸品の中で重要なものは武器と兵器、馬具の部品と飾り、身体装飾品とベルトのアップリケ、金属と陶製の生活用品と祭儀用品、金属と大理石の彫刻です。
コレクションの中核はブロンズ、銀、金製容器のみごとな品揃えとなっています。この重要な品々は紀元前8世紀から西暦6世紀にかけての瓶や道具で構成されていて、これらは、中近東、小アジア、大陸と島、ギリシャ、北エーゲ海沿岸、ギリシャに隣接するトラキアとマケドニア、黒海北岸のステップ地帯にあったスキタイ、エトルリアと南イタリア(マグナ・グラエキア)、イベリア半島といった、古代世界全体にわたる作業場で制作されました。中でも最も注目に値するのは、ブロンズと銀の角と角杯の一群です。銀製の瓶や台所用道具、そして金メッキで人物をかたどった様々な形の銀製の飲用コップは、別のカテゴリーに属しています。このコレクションには、オルフェウス(ギリシャ神話の詩人・音楽家)が登場する3つの金メッキの銀の瓶もあります。この瓶は今までに知られている金属容器の中に、この神話の音楽家が登場する初めての物です。
同様に、金属製品ではめったにない有名な古代ギリシャ英雄であるテセウス(アテネの王)とヘレンの肖像があって、いくつかの金メッキの銀製容器とカンタロスの飾りに用いられています。
コレクションの大部分は、オイノホエ(oinochoae、ワイン注ぎ)、シトゥラ(Situla、水桶)、 ハイドリア容器(hydriae)とアンフォラ(amphorae、水とワイン運搬用の甕)、フィアラ杯(phialae、libation plates、神酒皿)、カップ、レードル(円形の杓子、おたま)、漉(こ)し器 (ストレーナー)など、さまざまなタイプのブロンズの容器です。
いくつかの金属製の瓶に見られる碑文は、特別な価値を持つきわめて重要なものです。それらのいくつかは、登場人物、あるいは所有者の名前や瓶の重さ、時には、献呈の決まり文句、謎めいた組み合わせ文字や落書きです。時には、この碑文には手をかけて鑿できちんと刻んだものもあれば、もっと注意を払って深く彫ったもの、あるいは単に金属表面に傷をつけた程度のものもあります。
コレクションは、まとまったものから順に体系的に出版し始めています。その第1巻は前ローマ期(pre-Roma)以後の金属製の容器と道具といったものを対象としており、全体で146の美術工芸品を紹介しています。第2巻は、同じグループの別の品々を対象に、目下準備中です。

その本
トラキア財団出版社は2004年に設立され、主としてブルガリアの文化・歴史遺産の保護とその促進に関連する科学文献の発行にあたっています。出版目録は、以下の通りです。
Marazov I., G. Kabakchieva, G. Lazov, T. Shalganova. 2005. Vassil Bojkov Collection.
Catalogue. Sofia (ブルガリア語と英語).
Marazov I., G. Kabakchieva. 2007. The Splendor of Bulgaria. Vassil Bojkov Collection.
Exhibition catalogue. Sofia (ブルガリア語と英語).
Marazov I., G. Kabakchieva, T. Shalganova. 2009. The saved Treasures of Ancient Thrace.
Exhibition catalogue. Sofia (ブルガリア語と英語).
Marazov I. 2011. Thrace and the Ancient World. Vassil Bojkov Collection. Exhibition catalogue.
Sofia (ブルガリア語と英語).
Sideris A. 2015. Theseus in Thrace. The silver lining on the clouds of the Athenian-Thracian relations in the 5 th century BC. Sofia.
Sideris A. 2016. Metal Vases and Utensils in the Vassil Bojkov Collection. Vol. 1. Sofia.
ヴァシル・ボシコフ・コレクションの金属製の瓶と道具のカタログの第一巻は、5つの章に分かれています。
第1章は、紀元前8世紀から4世紀の半ばにわたる、中東、近東、アナトリアのフリギア、フェニキアと前アケメネス朝などの容器で構成されています。また、いくつかのアケメネス朝の品目も含まれます。その多くは金属工芸の中のリディアン・スクールを表していますが、他の品目の特徴はアケメネス朝と古代ギリシャの都市、プロポンテス(Propontis)と小アジアのエーゲ海沿岸地方との交流の深さを示しています。
第2章では、古代期のギリシャの金属工芸の製造-紀元前6世紀の第2四半期から5世紀の第1四半期までの範囲の美術工芸品-に関して説明しています。ラコニア、コリントス、イオニア、ギリシャ西部、マグナ・グラエキア(大ギリシャ世界)などの各地の最も重要な中心地を紹介しています。
第3章は、上記の中心地の作品を含み、それにアテネ、アルゴス、カンパニアとエトルリアが加っています。ペルシャ戦争の終わりからペロポネソス戦争の終わりまでの期間を含みます。この時期のアテネとアテネに関連した銀器は、独特のグループを構成します。その技術的な完成度、審美的価値、それら卓越した特性により、ヴァシル・ボシコフ・コレクションは、古典金属工芸関連の世界中の博物館のコレクションの中で一流の位置にあります。
第4章では、紀元前4世紀全体について紹介します。 –それはコリントスとアテネのようなすでに確立された工芸品中心地からの作品と、それに加えられた南イタリアとマケドニアの工芸中心地から成り立っています。今世紀中に、マケドニア、トラキア、そしてスキタイは、金属製の容器、特に貴金属製のものの使用、墓の堆積、そして生産において、これまでにない高さに達します-それはギリシャの文化モデルの拡大と、アケメネス王室の宝物の買収に由来する大量の富の突然の流入の両方に間違いなく関連する現象です。シトゥラ(水桶)(Situla)、オイノホエ(oinochoae)、食用コップなどのいくつかの瓶型の種類は、古典時代の終わりにその進化を中断することはありません。それゆえ、彼らの発展は4世紀の変わり目まで続いています。それはギリシャの半島の外で起こった権力と経済の震源の著しい変化の結果として、物質文化の傾向と流行においてより顕著な変化が起こる時です。
最後の章では、紀元前3世紀から1世紀初頭にかけて、かつてはギリシャ世界の周辺と考えられていましたが、今ではヘレニズムのエクメネ(人類居住地)の新たな中心地となっている地域から、大部分のカップについての資料を収集します。
カタログの各エントリには、短い主見出し、連番、及び工芸品が作られている素材とコレクション内の在庫番号を常に記載した、より説明的な節があります。各エントリの本文は3つのセクションに分かれています。技術的な説明 - わずかに小さい文字で印刷されています - その後に工芸品の物理的な説明と議論が続きます。この第一巻で発表された146の工芸品は、388の絵と110の絵によって説明されます。そして、彼らのエントリーは他のコレクションと博物館に匹敵する工芸品の111の絵によって支えられます。テキストに記載されている検索スポット、生産拠点、および地域の約500の地名が、3つの地図に表示されています。カタログは、3つの索引(個人名、地名、一般索引)で終わり、その後に21の碑文と落書きのリスト、比較対象の図のリスト(comparanda)、および一致リストが続きます。Thrace財団の以前の出版物のものと現在の巻の中のエントリの識別を容易にすることを意図しています。
写真を提供したすべての機関, 組織および担当者への謝辞:
Allard Pierson Museum, Amsterdam, Netherlands –アラード・ピアソン博物館、アムステルダム,オランダ
American Numismatic Society, USA -米国賞牌協会
Antikensammlung der Staatlichen Museen, Berlin, Germany – アンティケンザムルング古美術収集博物館、ベルリン、ドイツ
Archaeological Museum of Igoumenitsa, Greece -イグメニツァ考古学博物館、ギリシャ
Archaeological Museum of Thessaloniki, Greece -テッサロニキ考古学博物館、ギリシャ
Archaeological Museum of Vergina, Greece -ベルジナ考古学博物館、ギリシャ
Ashmolean Museum, Oxford, UK -アシュモレアン博物館、オックスフォード、英国
British Museum, London, UK -大英博物館、ロンドン、英国
Brooklyn Museum, New York, USA -ブルックリン美術館、ニューヨーク、米国
Государственный Эрмитаж, Санкт-Петербург, Россия -エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク、ロシア
Регионален исторически музей – Шумен, България ―
シュメン地方歴史博物館、シュメン、ブルガリア
Paul Getty Museum, Malibu, USA -ポール・ゲティ美術館、マリブ、米国
Metropolitan Museum of Art, New York, USA -メトロポリタン美術館、ニューヨーク、米国
Musée du Louvre, Paris, France -ルーブル美術館、パリ、フランス
Museo Arqueológico Nacional, Madrid, Spain -マドリッド考古学博物館、マドリッド、スペイン
Museum of Fine Arts, Boston, USA -ボストン美術館、米国
Национален исторически музей – София, България -ブルガリア国立歴史博物館、ソフィア、ブルガリア
Princeton University Art Museum, USA -プリンストン大学美術館、米国
Регионален исторически музей – Враца, България -
ヴラツァ地方歴史博物館、ヴラツァ、ブルガリア
Staatliche Antikensammlungen – Glyptothek, Munich, Germany -古美術収集市立博物館 -グリプトテェク、ミュンヘン、ドイツ
The Ure Museum of Greek Archaeology – University of Reading, UK
レディング大学ウレ・ギリシア考古学博物館, 英国
Walters Art Museum, Baltimore, USA -ウォルターズ美術博物館、ボルチモア、米国
Диана Димитрова -ディアナ・ディミトロヴァ
Stella Drougou -ステラ・ドルグ
Annareta Touloumtzidou -アンナレタ・トゥルミツィドゥ
Mikhail Treister -ミカイル・トライスター
全体調整 / ヨアナ・チョラコヴァ
テキストと概念 / アタナシウス・シデリス
総合編集監督/ ルジャ・ポポヴァ
英語編集/ Don Evely ドン・イヴェリ
アートディレクター&グラフィックデザイン/ ビリャナ・サヴォヴァ
VBC工芸品の保存と修復/ヴェセリナ・インコヴァ教授
VBC工芸品の図録 / ヴァニャ・マラクチエヴァ
VBC工芸品の写真/ マリン・カラヴェロフ
地図/ デイヴィス・ディンコフ、地図製作スタジオ DavGEO
印刷原版制作/ ヴラディミル・スタメンコフ
生産コンサルタント/ ヨアン・ゲオルギエフ、Bulged(社名)
翻訳 (日本語) エレオノーラ・コレヴァ

報道用資料
トラキア財団による新しい出版物
Athanasios Sideris: Metal Vases and Utensils in the Vassil Bojkov Collection, vol. 1, Sofia 2016
Athanasios Sideris(アタナシウス・シデリス): ヴァシル・ボシコフ・コレクションによる金属製の瓶と台所用品、第1巻、ソフィア、2016
トラキア財団は、この度ヴァシル・ボシコフ・コレクションの企画による体系的な科学カタログの第1巻を出版しました。このコレクションには、宝石から大理石の彫像までさまざまなカテゴリーの考古学資料が含まれています。この第1巻には、最も豊かで最も重要な古美術品である金属工芸品、特に金属製の容器が収められています。
5つの章には146個の容器と道具が入っています。そのうちの半分以上は未発表のもので、ブロンズ、銀、金製のものです。アンフォラ(取っ手を二つ持つ甕)や釜などの稀少な大型容器については、銀メッキの美しい飲用カップと並んで掲載されています。宴会などの付き合いの場で用いられてきた瓶は、祭儀用のものと並べて掲載されています。それらの多くは中近東の作業場で作られたもので、フリギア人、フェニキア人、ペルシャ人の美的、社会的意識を表しています。このほかにもペロポネソス、アテネ、マケドニア、エーゲ海沿岸の作業場でつくられたものも多く掲載されています。
さまざまな形、魅力的な機能、豪華な装飾、これらの瓶のいくつかには珍しい神話が描かれており、また碑文や落書きなどその多様性は、このコレクションを金属製の容器に関する世界で最も裕福なコレクションの一つとしております。
第1巻は、古美術とその詳細内訳を、何百もの高品質のフルカラー写真と、側面図と詳細図で、また他の博物館のコレクションとの比較資料で示すなど、豪華な内容をもっています。地図、索引リスト、相互参照を、どなたも楽しくご利用頂けます。同時に、専門家にとっても、研究用に広範囲にわたる最新の参考文献としてご満足いただけることでしょう。
連絡先
〒1000 ソフィア市モスコフスカ通り43号
電話: +359 2 986 29 79; +359 2 989 21 25
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トラキア財団